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ミツバチと共に90年――

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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

美味しいから好き

ブンブン

 

 大人になって、蜂蜜には多くの種類があると知った。そして、体に良いとされる成分により、何かしらの効果効能があることも知った。しかし、私は単純に「美味しいから好き」。
 私が子供の頃、約40年ほど前は外遊びが主流で、田舎育ちの私は道の脇に生えている、おしろい花の蜜や、やぶ椿の蜜を吸って遊んでいた。蜜入りと無いのとあって、くじ引きみたいで楽しかった。特にやぶ椿の蜜に当たると、量が多く甘味も強くて大好きだった。
 ある時、おしろい花が目に入った。懐かしい思い出と思って、蜜を吸ってみたら、ほとんど分からない。くじ引きどころか、どの花にも蜜を感じない。「今時は蜜が無いのかな?植物も環境に合わせて変わるのかな?」と思った。
 それを確かめるようにやぶ椿の花が咲くと、また試してみた。すると、同じように、ほとんど分からない。若干、蜜があるものもあったが、薄くて美味しくない。「これは環境がどうのではなく、自分にあの時の繊細な味覚が無いだけだ」という現実にぶち当たった。
 チョコレートや砂糖菓子など、甘いものが簡単に食べれる現代の食生活に加え、年齢とともに衰える身体的機能には逆らえない。それは受け入れていかなければならないことである。
 そう思うと、ミツバチが集めてくださる蜜をこんなにも甘い状態でいただけるということが、なんとありがたいとこか。そして、養蜂のお仕事をされる方々のお力で、あらゆる花の蜜を店頭で、また通販で購入させていただけるとこはとても嬉しい。
 「ちょっとお値段が高いかな」と思う時もあるけれど、私にはもうあの時のように花の蜜を楽しめない現実がある。そして、ミツバチの力や、養蜂のお仕事の方の苦労を思う時、「簡単に蜂蜜をいただけるのだから、お値段高めでも仕方ない、当然だ」というところに落ち着く。
 食べ比べも面白い。こんなに風味が違うものかと感心する。鈍くなった味覚でも分かるありがたさ。
 私の場合、料理に使うとか、あれにこれに、というよりも、スプーンで少しずつ味見をするのが大好き。美味しい蜂蜜をいつもありがとう。

 

(完)

 

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