田村治子
母は95才になった。長寿の秘訣は「蜂蜜を欠かさない事」と言うのが持論である。
母は60才の時、気管支喘息により入院した。その病院は人里離れた山中にあり、清流を挟んだ向かいのアカシヤ林の中に養蜂場があった。そこでつくられた蜂蜜が院内の売店で販売されており好評を得ていた。喘息には蜂蜜が良いと聞いた母は、以来30年間、一日も欠かさずその蜂蜜を口にしている。洒落た使い方は知らないが、牛乳に溶いたり、パンにつけたりが定番である。瓶の底が見えるようになると、娘である私に「ご用達」依頼の電話が来る。
その効用かどうかは定かではないが、その後、喘息発作もなく、顔や手には95才とは思えないくらい「しみ」や「しわ」もない。手の甲を見せては「蜂蜜のお陰だ」と大いに自慢する。
私も母に習い蜂蜜愛用者となった。焼酎にレモンと一緒に溶く「蜂蜜レモン割り」は最高に旨く、手の甲を見ながら至福の時を過ごしている。
そして、友達の誕生日プレゼントには、迷わず蜂蜜と決めている。それもあっさりとした、優しい味のアカシアにこだわっているが、最近は純正物が少なくなった。
そろそろ、母から「ご用達」の依頼が来る頃である。近くの道の駅にでも探しに行ってみようと思う。
(完)
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2024 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.