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ミツバチと共に90年――

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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

ミツバチと私と金柑

なる。

 

 ミツバチは、私とは遠いところに巣をもち、蜜を集めている。喉に良い。東京下町育ちの私のミツバチやはちみつに関する知識・関心は以前までとても浅いものであった。私が住んでいた街は、田んぼや花など自然が溢れたところではなかったがガーデニングに勤しむ家庭が多く、花はたくさんあるので、ミツバチに遭遇する事は珍しいことではなかった。特に、近所の家のひまわりにミツバチがいる事が多く、私は遭遇する度にミツバチに怯えつつも怪訝な顔をし、ささやかな抵抗をしていた。

 そんなある日。東京以外に住んでみたくて田舎に越すことにした。
 好奇心が旺盛な私は、近所だけではなく興味があるあらゆるところに足を運んだ。その中で「隣町では土日に朝市をやっている。」という噂を聞き木枯らしが吹く中、朝市へと向かった。自然が豊かで農作物が新鮮、これは都会ではなかなか味わうことができなかった。朝の澄んだ空気と採りたての野菜の香りに体中が喜んでいるようだった。ふと、オレンジ色の物体と目が合った。近づいてみると金柑が大量に袋詰めされていた。私は、喉が弱く冬は悩まされることが多かったこともあり、金柑が喉に良いという知識だけで購入をした。
 帰宅後、食べ方を調べると「金柑のはちみつ漬け」が古くから喉に良いとされている、という記事を読んだ。早速はちみつを購入し、金柑を漬けることにした。
 金柑にはちみつを垂らすと、金柑のオレンジ色がラメを塗ったようにピカピカとしてとても綺麗だった。数日おいて完成した物を飲むと、甘さと酸味のバランスが喉を潤し、すっかり私は金柑のはちみつ漬けにはまってしまった。このお陰で、喉に悩まされることがない冬となった。

 久しぶりに地元の友人のカフェへと赴いた。すると「この地ではちみつが作られているの知ってる?試食しない?」といわれ私は驚いた。東京の下町ではちみつ!?友人によると実は、近所の屋上に巣箱を置き以前から、はちみつを作ることにチャレンジしていたらしい。おそるおそる食べてみる。美味しいだけではなくほのかに、ひまわりの香りがした。そのことを言うと「このはちみつは夏にミツバチが集めた蜜だよ!」と言われ、私がミツバチに遭遇する度に怪訝な顔をしていた近所の家のひまわりもここに含まれているのかな、と思ったら急にミツバチを身近に感じ、愛おしくも感じるようになった。ミツバチとは無縁、とずっと思っていたが知らぬ間に共存していたのだ。その時私は、もし今度ミツバチに出会ったら、優しく・怖がらず・ありがとうと心の中で囁こうと思った。しかし、今は冬。この場を借りて「いつもおいしいはちみつをありがとう!」とミツバチに伝えさせていただきたい。いつか地元のはちみつで金柑をつけて、地元のみんなで飲みたいという夢を抱きながら今日も私は、金柑はちみつを飲む。

 

(完)

 

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